全身麻酔薬や局所麻酔薬の性質と作用機序の解説や、気をつけたい合併症・偶発症についての解説を全10話に渡ってご紹介いたします。
監修
札幌医科大学医学部麻酔科学講座 教授 山蔭 道明 先生
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全身麻酔と異なり、局所麻酔では麻酔が必要な部位に、麻酔作用が働くようにすることが可能です。これは、解剖学的な知識によって、理解できます。
脊椎、脊髄の構造
- 脊髄は、脳の延髄から続いて、脊柱の中にある脊柱腔の中を尾側に伸びている神経線維の束で、脳と合わせて中枢神経系を構成します。
- 脊髄は、内側から順に軟膜、くも膜、硬膜の3層の膜に覆われています。軟膜とくも膜の間の空間をくも膜下腔といい、硬膜と脊柱管の間の空間を硬膜外腔といいます。
- くも膜下腔は、脳室からつながり、無色澄明の髄液(脳脊髄液)で満たされています。
- 硬膜外腔は、静脈血管と脂肪などで満たされています。
※薬剤のご使用の際は、各製品の添付文書をご確認ください。
デルマトーム(皮膚分節)
- デルマトーム(dermatome)は皮膚分節と訳され、脊柱の椎間孔から伸びる脊髄後角の感覚神経路の皮膚に対する支配領域を示します。
- 脊椎は、大きく4つの領域〔頸椎(C)、胸椎(T)、腰椎(L)、仙椎(S)〕に分けられます。
- 脊椎の頸部には、7個の椎骨(C1~C7)があり、8対の頸神経(C1~C8)が脊髄につながっています。
- 脊椎の胸部には、12個の椎骨(T1~T12)があり、12対の胸神経が脊髄につながっています。脊椎の腰部には、5個の椎骨(L1~L5)と5対の腰神経が脊髄につながっています。
- 第5腰椎の尾側には、仙骨が続いていて、5対の仙骨神経(S1~S5)が脊髄につながっています。
- 椎骨ならびに神経には、領域内で頭側より番号が割り振られています。例えば、「C3」は第3頸椎または第3頸神経を表します。
- デルマトームにはC1が書かれていませんが、これは運動神経が主で、感覚神経がつながっていないためで、記載漏れではありません。
- 硬膜外麻酔では、デルマトームを基準にして硬膜外穿刺部位を決定します。
- 脊髄くも膜下麻酔では、硬膜外麻酔ほどには麻酔部位の限定はできないので、デルマトームはおよその目安として用いられます。また、脊髄くも膜下麻酔では、下半身の麻酔に用いられることが多く、脊髄くも膜下麻酔の麻酔高で「T10」とは、T10より尾側全体を表します。
※薬剤のご使用の際は、各製品の添付文書をご確認ください。
参考資料
- 「標準麻酔科学 第5版」医学書院, 2006
- 「麻酔科学スタンダード 1.臨床総論」克誠堂出版, 2003